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ワークマンのDXについて勝手に検討してみた

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 前回、お伝えした通り、ワークマンのDXのについて勝手に検討してみたいと思う。ちなみになぜワークマンかというと、ガイアの夜明けを見たからだ笑 動機は大したことないのだが、調べていくうちに面白いことが分かってきたので、紹介したいと思う。

■ WORKMAN Plus+(ワークマンプラス)について

 近年、作業服などのイメージが強かったワークマンであるが、WORKMAN Plus+(ワークマンプラス)というアウトドア、スポーツ、レインウエアの専門店を出店しており、人気を博している。従来の事業で培ったナレッジを活かしながら、アパレル市場に参入した。これは、コンサルから言うと、自社の既存リソース(ヒト・モノ・カネ)を活用した新規事業といったところであるが、様々なメディアが取り上げるように業績も好調で成功した事例であると言えるだろう。

 しかし、今述べたような簡単に既存リソースの活用とだけ言える話ではなかった。ワークマンでは、そもそもデータを活用する文化があり、科学的な根拠に基づいてマーケティングを行っていた。そのあたりについて、紹介していく。

■ ワークマンのデータ活用

 ワークマンについて調べると、面白い記事を見つけた。日経クロステックの「部長昇進の条件にデータ分析力、ワークマンが徹底するきめ細かなIT教育」という記事だ。大変失礼ではあるが、ワークマンのような作業服を売っている会社がデータ活用だ!?と思ってしまったくらいだ。

 ワークマンでは、突出したデータサイエンティストは必要ないが、全社員に最低限のデータ分析力を身に付けさせるために、人事制度や研修にデータ分析力が組み込まれているという。実際に本部から仕入れ先への発注も、店舗から本部への発注も、独自のアルゴリズムを組み込んだシステムをほぼ自動化しているという。正直、この時点で面白いなと思った。近年の小売業はやっとデータ活用について検討をし始めたが、当然ながら既存システムとの兼ね合いと苦戦しているケースが多数である。しかし、ワークマンではおそらくデータ活用を前提としたインフラ環境やデータ連携が整えられており、データ分析を行えるような環境がすでに作られているわけだ。ちなみに多くの企業がこのデータ分析を行う前に、システムの整備から始まってしまう理由には、部分最適化の観点が1つ考えられるだろう。多くの企業は機能別組織の形態を取っており、部門毎に業務効率化などの観点からデータについて考える。そのため、他部門との連携については大げさに言うと考えていない。そのため、会社内にシステムが多数存在し、連携できないなどの事象が発生する。これを解決するためには、経営企画部などからPJを立ち上げて、会社全体としてデータ整備に取り組む必要がある。それほど近年のデータ活用は重要な位置づけであり、かつ今回のコロナによりさらに重要性が高まったと言える。これは後述で紹介するが、小売業や飲食店はコロナ以降、顧客を本質的に選ぶことが求められる。お客様第一というのは本質的なお客様第一に変わっていくのだ。

 話しを戻すと、ワークマンではデータ活用の土壌ができているわけだが、それは人事制度にも含まれており、部長への昇進条件にはデータ分析力が必須とされている。また、SV(スーパーバイザー)は自分が担当するFC(フランチャイズチェーン)店に対して、経営コンサルティングをする役割を担っており、店頭の品揃えや陳列は店舗ごとに決めている。これらはSVがさまざまなデータを用いてFC店の店長にアドバイスをしているという。これを読んでふと思ったのが、ドラッグストアである。ドラックストアではちょっとワークマンと異なり、店舗のマーケティング戦略を検討するのは、商品を卸しているメーカーである。例えば、花王カスタマーマーケティングは提案力を強みとしており、店舗のマーケティングを小売店に提案している。小売店もそれを求めており、花王カスタマーマーケティングは、他社よりも一歩リードしていた印象だったが、2016年にユニ・チャーム、資生堂、ライオンが共同出資で、JRIという組織を立ち上げて、データ分析や売り場支援を行う体制を作った。

 このように、小売業ではマーケティングにおけるケイパビリティはそこまで有していない。(もちろん、中にはデータマーケティングの優れている企業もいる。三越やCVS、食品スーパーを見るのが良い)

 さて、ワークマンではSVに必要なデータ分析スキル・経営指標に必要な分析演習など、データ分析を重要とする土壌ができているわけだ。ただ、ここで言いたいことはこの次だ。コロナによりさらに顕在化することになるが、ワークマンはガイアの夜明けにあったように機能面には優れているが、デザイン性や利用シーンなどデータには見えづらい顧客のニーズに対して応えることが苦手である。しかし、彼らはその弱さを認め、外部に支援を求め製品開発に取り組むようにした。ガイアの夜明けにあったようにブロガーに協力を依頼したのである。これも後ほど述べるが非常に良いアイデアだと思う。特に製品開発の部分ではなく、マーケティング施策として非常に大きいと考えている。突然だが、ここからDXについて説明する。

■ ワークマンのDXについて勝手に考える

 なぜブロガーを活用したことが良いことだったのか。それは、商品にストーリーが生まれるからである。消費者の声を聞きたいだけであれば、アンケート会社と活用して、消費者調査をすることも可能であり、かつ定性情報も取得できる。私が思うのは製品開発工程よりも、その製品が出来上がるまでのストーリーである。

 これまで、小売業は何を重視していたのかというと、顧客のライフタイムバリュー最大化である。ある一時点において、自社商品の購入時期を予測し、最大購入化させることである。そのために、RFM分析をし、顧客のフェーズや時に重点を置き、リマーケティングやキャンペーンなどを実施した。しかし、コロナ以降それは無力になる。前回のコラムでも述べたように、消費者行動は大きく変わっていき、かつもともと若者にあったサステナビリティななになにといったストーリーがあいまって、個々に適したマーケティングや販売活動を本質的に求められるようになる。これは、One to Oneマーケティングではない。

 また、専門店は商品の拡張も余儀なくされるだろう。個々に適したものを提供するということは、ある商品をどの時に買ってもらうからから、Aさんが何を欲しているから、それに適したコンテンツやサービス、商品を提供しなくてはの軸に変わってくるからである。個々の経験価値を高めるということはそういったことである。しかし、常にラグジュアリーや高級感である必要はない。富裕層でも彼らの範囲で、日常を求める範囲はある。

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 つまり、いかに既存顧客を大事にするかが、コロナ以降では求められるのである。すでに大手の小売業では、取り組み始めていると聞くが、中堅となるとそこまでの取り組みはなされていないし、その重要性を理解するのも難しいと聞く。しかし、ホリエモンが経営する飲食店などもよく見て欲しい。別にホリエモン教でもないし、彼が著名人であるからでもないが、コロナからの対策がスピーディーかつ正確であった。もちろん、コロナになっても支えられるほどの、既存顧客ないしは、潜在顧客を掴んでいたわけだが。

 では、ワークマンでは何を取り組むべきか。決して、ラグジュアリーなものを対象としているわけではなく、機能性やデザイン性が求められそうなイメージもあるが。まず考えられるのは、顧客を階層化することである。大きくいうとアパレル業界に参入してきたわけだが、競争が非常に激しい業界である。今後、コロナの影響で店舗への来店数は減るだろう。しかし、そもそも幅広く買ってもらう必要は無いし、1回に5,000円もいかない顧客より、1回に数万以上を使う顧客の満足度を高めることを考えたほうが良い。そのために、まず顧客を階層化し、自社の売上に貢献してくれる消費者に目一杯のインセンティブを渡したらいい。この手法は、私の知る限りでは、数年前からスーパーで活用されている手法である。優越感を感じて、嫌な気持ちを感じる人はいないし、消費者に感謝を伝えることは非常に大事だ。そして、その階層ごとにコンテンツやリコメンドする商品を変えていく。それには当然ながらデータが必要になってくるため、今あるワークマンのデータインフラは貴重である。加えて、顧客の購買行動はライフタイムバリューではなく、実店舗の営業時間を除いて寄り添うサービスが求められるようになるわけだが、それについては他社と協業をしていき、幅を広げていけば良いと考える。今後、企業間や業種間で顧客を奪い合ってきたのから、いかに顧客のライフスタイルに添えるかといったお題に対して、サービスなり、商品なり、仕掛けを求められるため、自社内のみでは対応できなくなり、他社とは協業的な関係性に変わってくると思われる。

 そして、店舗については、小売業が今までうまく取り組めなかったショールーム化がポイントになると考えている。食品でもそうだが、宅配やECサイトが求められる役割は、お試しのチャネルや1つの店舗としての位置づけを持ち、いかに店舗と変わらずに、いかに店舗と同様に情緒的価値を実現できるかが、求められる。すると、店舗ではどのような役割が求められるかというと、店舗で売上を上げる必要はなくなり、広告としての位置づけが増してくるわけだ。ワークマンでは、最近C&C式のECサービスを立ち上げて、店舗で受け取るECサービスを始めた。つまり、店舗はピックアップの拠点としての位置づけに変わってきている。もちろん従来どおり、店舗での購入も1つの機能ではあるが、店舗の持つ役割や位置づけをECサイトや消費者の購買行動から、再検討していくことが中長期的なDX戦略には必要だろうと考えている。

 

 最後に、次回は飲食店のDXについて考えていきたいと思うが、今回の小売店におけるDXについてポイントは、大きく3つである。

  1. 従来のライフスタイルのシーン別にマーケティングを行っていた手法から、既存顧客のライフスタイル全体に寄り添うサービス提供へと変わっていく必要がある
  2. そのためには、データインフラを整えておく必要がある
  3. ECや店舗の役割や位置づけを再検討する

 まずはこのポイントから考えて、今後のDX戦略について検討していくことが最初のステップだろう。