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ソーシャル・ビジネスとは? ~市場規模、プレイヤー整理~

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■ ソーシャル・ビジネスとは?

 2020年4月16日、テレビ東京のカンブリア宮殿にてボーダレス・ジャパンのビジネス等について、取り上げられた。ボーダレス・ジャパンの田口社長は、2018年に日経ビジネスの「世界を動かす日本人50」に選出されるようほど、注目を浴びている。そこで、よく聞くキーワードが「ソーシャル・ビジネス」である。実は、ソーシャル・ビジネス自体は昔から存在し、発祥は1980年代頃のイギリスと言われている。また、キーワード自体が認知され始めたのは、2006年のノーベル賞を受け取ったバングラデシュのグラミン銀行とその創設者のムハマド・ユヌス総裁に贈られたことがきっかけと言われており、ムハマド・ユヌス博士は、自身の著者で「ソーシャル・ビジネスは、企業として設計され、経営されるものである。製品やサービス、顧客、市場、費用、そして利益を伴っている。しかし、企業の利益最大化の原理は、社会的利益の原則に置き換えられている。投資家を喜ばせるために最大限の財務上の利益を集めようとするのではなく、ソーシャル・ビジネスは社会的な目標を達成しようとするのである」と定義している。また、経済産業省では、社会性(社会課題に取り組むことを事業活動のミッションとする)・事業性(ビジネスの形を成し、継続的に事業活動を進めていくこと)・革新性(新しい社会的商品・サービス等を開発し、活用すること)を満たす主体をソーシャル・ビジネスとして定義している。

 つまり、それらは社会課題に対して取り組みながら、事業としても継続性を持ち、そして新しい社会的価値を創出していくこととなる。このようなサービスは儲からない印象を持つ方も多いかと思うが、ボーダレス・ジャパンは年間54億円を稼ぎ出し、成長を続けている成功企業と言えるだろう。なぜ、ボーダレス・ジャパンは成功することが出来たのか、どのようにソーシャル・ビジネス市場にて、勝ち上がって来たのか、ボーダレス・ジャパンの経営戦略も含め、ソーシャル・ビジネス市場について調査をしていきたいと思う。 

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ソーシャル・ビジネスの定義

 

■ ソーシャル・ビジネスの市場分類

 まず、市場全体を把握する上で、どのようなビジネス形態があるのかを調べて行きたいと思う。ソーシャル・ビジネスは、社会的課題について打ち手を講じていくビジネスであるため、社会課題から整理をしていき、各プレイヤーのビジネスと組み合わせていく。このようなケースでは、たたき台となるものが必要であるが、今回は国連サミットによって定められている17の目標(Sustainable Development Goals、略してSDGs)をベースにまとめていこうと思う。ちなみにSDGsとは、2030年までの長期的な開発の指針として決められた、国際社会共通の目標のことである。

 17の目標については以下の通りであり、この目標に対して具体的な169のターゲットが紐付いている。今回は市場分類のベースとして活用するため、169のターゲットについては省略する。

  1. 貧困: 貧困をなくそう
  2. 飢餓: 飢餓をゼロに
  3. 保健: すべての人に健康と福祉を
  4. 教育: 質の高い教育をみんなに
  5. ジェンダー: ジェンダー平等を実現しよう
  6. 水・衛生: 安全な水とトイレを世界中に
  7. エネルギー: エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  8. 成長・雇用: 働きがいも経済成長も
  9. イノベーション: 産業と技術革新の基盤をつくろう
  10. 不平等: 人や国の不平等をなくそう
  11. 都市: 住み続けられるまちづくりを
  12. 生産・消費: つくる責任、つかう責任
  13. 気候変動: 気候変動に具体的な対策を
  14. 海洋資源: 海の豊かさを守ろう
  15. 陸上資源: 陸の豊かさを守ろう
  16. 平和: 平和と公正をすべての人に
  17. 実施手段: パートナーシップで目標を達成しよう

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ソーシャル・ビジネスの市場分類

  

 一方、三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、「我が国における社会的企業の活動規模に関する調査」において、市場規模を算出するにあたって、業種別から推計を行っている。推計結果によると、中小営利法人において社会的企業の多い業種は、サービス業・その他産業・不動産の順である。医療、飲食、教育関連については、規模が小さいことが伺える。これは、後述するボーダレスジャパンを見ると分かることであるが、社会的課題を取り組むにあたり、雇用を生み出すことによって貧困層を救うビジネスモデルが多く見受けられた。その中ではサービス業や製造業(製造小売業)が比較的多い。サービス内容自体は様々であるが、ある事業において収益を得るモデルを作り、そこで貧しい方々を雇用し、モデルの中に組み込むことで回していくといったケースである。このようなケースでは、ビジネスに陰りが見えない限り、継続性を持ちながら社会的課題に取り組むことができると思われる。

 

■ ソーシャル・ビジネスの市場規模

 業種別で見ると、市場規模が一番大きい業種はサービス業(32.7兆円)である。一方、飲食店や医療、教育はサービス業と見ると非常に小さい。一方で、SDGSの目標別で見ると、環境や保健、教育における分野に取り組む企業が多く、かつ市場規模も比較的大きい。定義が異なるため、SDGS別では、教育や保健の市場規模が大きくなっているが、これはサービスを通じて事業を展開していると思われるため、業種になるとサービス業に入るのではと推測される。また、その他にも都市、ここでは観光分野が主であると思うが、加えて成長・雇用もビジネスとしては有望な領域であると考えられる。それはボーダレス・ジャパンの事例のようにビジネス自体が儲かれば、内容に関わらず社員として雇用することで、社会貢献に繋がるからである。但し、雇用する人材は必ずしも日本とも限らないし、物理的な距離の制約も考えられ、簡単に雇用すればと思うが、そんな簡単ではないことが分かるだろう。

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ソーシャル・ビジネスの市場規模

 

■ ソーシャル・ビジネスの市場動向、成長性

 ソーシャル・ビジネスの市場動向については、日本公庫の融資実績を参考にしていきたい。近年の融資実績は、平成26年度は6,045件、合計517億円の融資実績であったのに対して、平成28年度は9,644億円、合計717億円の融資実績であった。CAGRは17.8%を非常に大きく拡大しており、今後もソーシャル・ビジネス市場は成長していくと推測される。また、融資要件においても緩和がなされ、スタートアップが参入しやすい環境も徐々に整備されていくと考えられる。

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ソーシャル・ビジネスの市場動向、成長性

 

■ ソーシャル・ビジネスのプレイヤー

 ソーシャル・ビジネスのプレイヤーについて、ボーダレスジャパンを中心に調査しながらプレイヤーを整理した。ボーダレスジャパンの特徴としては、日本の社会的課題を解決するというよりかは、バングラデシュやミャンマー等の東南アジアを対象としながら、収益においては日本で儲けるところである。他のプレイヤーでは、網羅はできてはいないが、日本でビジネスを行い、日本の社会的課題に取り組むようなモデルが多く見受けられた。また、全体としては雇用を生み出すための事例や、食(農業、酪農)に関する事例において、事例が多くある。さらに、収益性というところでみると、やはり成立させるのが難しいことが伺える。ボーダレスジャパンであっても1事業あたりの収益は良くて10億前後(公開情報によると)であり、かつ事業を多数保有しているが、実際には数事業において収益を確保していることが分かる。もう少し、ボーダレスジャパンについて深堀りしていこう。

 ボーダレスジャパンは、近年売上を順調に伸ばしており、2019年には54億円にもなる企業である。しかし、純利益率は2.8%とやや低いが、なるべく従業員等に還元するモデルであるからと推察される。また、主な収益構造としては、革製品の製造・販売である。もともとはハーブの栽培・販売が先であるが、広がりとしては革製品が多く見受けられた。さらに、共通していることは、東南アジアを対象国とする場合には、製造小売のモデルを多く活用していることが特徴的である。現地の人々を雇用し、現地で採用したものを日本で販売するモデルが主であり、これがボーダレスジャパンのビジネスの主であると思われる。勘違いしないように述べると、現地の被雇用者は、現地の雇用状況よりも好条件であり、決してコストを削減するために東南アジアで製造を行っているわけではないというところである。もちろんその分、販売単価が安く・かつ良いものを提供できるというメリットもあるものの、このモデルをストーリーとして、商品価値に付与し、販売していることが本来の目的ではないかと思う。筆者もビジネスレザーファクトリーから購入した商品を愛用しているが、品質は高く、かつストーリー性も好んでいる。個人的にはiPhone XS MAXの手帳型が無いことだけが、残念ではあるが。

 いずれにしても、このモデルは近年の消費者の嗜好性を踏まえると、非常にマッチしたモデルであると考えられ、今後もこのモデルを活用しながら事業拡大をしていくのではないかと考えている。消費者は製品に対して、ストーリーや意味を持たせるようになっていることや、「コト消費」という機能的価値のみならず、経験価値に対して欲求が生じている。そのため、製品自体が高品質かつお手頃な価格で提供され、かつ商品そのものに意味やストーリーがあることによって、購入する消費者自体にも社会的貢献という経験を与えることができる。 

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ソーシャル・ビジネスのプレイヤー

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ボーダレスジャパンの業績推移

■ 今後の展望

 ソーシャル・ビジネスでは、今後ボーダレスジャパンのようにビジネスとしての継続性の観点を検討する必要があり、社会的貢献そのものを商品価値やサービス価値に付与していくモデルが、今後は増えてくるのではないかと思われる。すでに今でもそういったモデルがあるものの、ビジネスとしてうまく成立できないのは、あくまでボーダレスジャパンの製品は高品質であり、手頃な価格で提供されており、差別化要素としてストーリーがあるが、商品価値そのものを、社会貢献として訴求していないところ、社会貢献そのものとして商品を販売してしまうところである。その製品自体にやはり魅力がない場合には、消費者は買わないが、いい製品が揃っている中で、何を買うのかという点において社会的貢献があるのであれば、それは選ばれる。そのビジネスとしての観点に社会的貢献をどう付与していくのか、それがひとつソーシャル・ビジネスを行っていく上で、継続していく上で必要なのではないかと思った。

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出所一覧